内縁の妻や夫に相続させたい場合の方法
1 遺言または死因贈与を使う
結論から申し上げますと、ご自身がお亡くなりになられた際に、内縁の配偶者(夫または妻)に財産を取得させるためには、遺言か死因贈与を用いる必要があります。
なお、これらの方法を用いる場合、正確には相続させるのではなく、遺贈または贈与するという形になります。
法律上結婚していない(婚姻関係にない)、事実婚の配偶者には相続権がありません。
そのため、遺言や死因贈与を使わないと、内縁の方が亡くなった方の財産を取得することは基本的にできません。
また、特別縁故者という制度もありますが、特別縁故者として財産を取得することができる条件は限られています。
以下、詳しく説明します。
2 内縁の配偶者には相続権がない
民法第890条においては、「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。」と定められています。
そして、この「配偶者」とは、法律上婚姻届けを提出している配偶者のことであり、内縁関係にある事実婚上の配偶者は含まれません。
被相続人と内縁関係にあった方が遺産分割の申立てをしたところ、法律上の配偶者ではないことを理由に申立てが却下されたという審判例もあります(仙台家審昭和30年5月18日)。
【参考条文】(民法)
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
参考リンク:e-Gov法令検索(民法)
3 特別縁故者として財産を取得できる条件は限定的
被相続人と同居していた内縁関係の配偶者は、特別縁故者として認められ、財産を取得できる可能性はあります。
もっとも、そもそも特別縁故者が被相続人の財産を取得できるのは相続人がいないことが前提となります。
つまり、被相続人に直系卑属(子や孫など)も、直系尊属(親や祖父母など)も、兄弟姉妹や甥姪もいない場合か、相続人全員が相続放棄をした場合でないと、特別縁故者として財産を取得できる可能性はありません。
さらに、被相続人に相続人が一切いない場合であっても、特別縁故者として財産の分与を受けるためには、まず相続財産清算人選任の申立てをし、相続人の不存在が確定した後に特別縁故者としての財産分与申立てをする必要があります。
そのうえで、特別縁故者であるということが認められてはじめて被相続人の財産を取得することができます。
相続した未利用財産等はどうするべきか 特別縁故者の申立|誰がなれる?相続財産分与の条件・裁判例